VOL.30

2025.03.07 FRI.

songdream KOBE

KIITASU(キータス)

昨年12月1日にオープンしたばかりのニューフェイス。神戸発の“木のおもちゃ”ブランドKIITASU(キータス)が運営するお店だ。デザイン性にこだわった、長く愛される木のおもちゃを販売している。約30年にわたり、OEMで木製品の取り扱いを続けてきた会社の実績をいかして、自社ブランドとしてスタートした。大人でも欲しくなるようなデザインと高品質な木製玩具を、ぜひ手にとってご覧いただきたい。

神戸ファッションマート3F

songdream KOBE

店内に一歩足を踏み入れた途端に、今日のテーマである、お店にある「意外なスペース」、「驚きの設備」。
の答えが目の前にあった。そこにあるのは木製の大きなプールだ。プールの中には木製のたまのようなものが、たくさん浮かんでいるように見える(もちろん水はないのだが)。そして、多くの子どもたちが楽しそうにプールの中で遊んでいる。プールのまわりでは、子どもたちのお母さんだろう。皆さん、目を細めて眺めている。神戸ファッションマートは家具やインテリアなどのショップが多い関係で、ひとつのお店にこれだけの数の子どもたちを見ることはない。目の前にひろがるのは、神戸ファッションマートの新しい風景だ。未来の潮流となる予感がする。

取締役 山口小百合 さん

ゼネラルマネージャー 山口和弘 さん

ゼネラルマネージャーの山口和弘さんは約30年前に中国でOEMによる木製品の製造・販売をスタート。日本国内の製造小売業(SPA)に卸してきた。SPA業界と取引する先駆者である。娘の小百合さんは父でもある和弘氏の会社で働いてきたが、自社ブランド「KIITASU」を立ち上げ、ブランディング活動に従事している。

店に入ると目の前には、ドーンと大きな木のプールがあった。

 プールを横目に見ながら、奥に案内された。サンプル品や展示商品であろう。そこには、木製品がたくさん展示してある。テーブルを挟んで向かい合い、「KIITASU」というブランドの中心にいる小百合さんへのインタビューがはじまった。もとは、神戸ファッションマートの中にある、和弘さんの会社で働いていた小百合さん。和弘さんは約30年前に中国でダイソーなど製造小売業に向けた木製品をOEM(相手先のブランドで生産すること)で手掛ける事業をスタートさせた。大量生産で技術の良いものをつくりたかったが、コストが安いうえに、高い技術力のある会社は日本にはなかった。そして、ちょうどこの事業を任せるのに適切な人物がいたので、そのひとに事業をはじめさせた。事業は時流に乗って順調に成長した。その後、小百合さんは父の会社で働くことになった。4年間父の会社で働き、さまざまなことを身につけた。
小百合さんは、かねてからこころに描いていた「大人もほしくなってしまうようなデザインと品質を併せ持った木製玩具」をコンセプトに神戸発の木のおもちゃブランド「KIITASU」を立ち上げた。そのバックグラウンドにはもちろん、和弘さんが永年、中国を拠点に展開してきたOEM事業のネットワークや技術があった。
 和弘さんの会社の木工製品を専門にOEM商品をつくる中国の会社(有能な職業集団)は、自社に工房を持っていた。その工房との協働によって、今回満を持して自社ブランドを設立した。和弘さん曰く「技術の差は丁寧さの差」であるそうだ。小百合さんの考えたアイデアを自身がラフ(簡単なイラスト画)にして示せば、中国の工房から商品の出来上がりの絵があがってくる。そして、チェックを返し図面へと進む。さらにサンプルをつくり、何度かの試作品のやりとりで完成品へと進んでいく。中国でも日本同様、伝統工芸の職人が減っていて、この工房には日本の伝統工芸品の制作依頼があるという。このような技術力のある工房が、「KIITASU」の木製玩具をつくっている。この工房は、どこよりも良い玩具づくりがしたい小百合さんを支える存在だ。

もともとはオンライン主体ではじめた「KIITASU」だが、いつかは店舗をもちたかった。徳島、奈良、滋賀など全国9ヶ所に展開する“おもちゃ美術館”という存在をたまたま出張途中に見つけたことから、子どもたちが玩具にふれることができるようなお店を実現しようと決意した。そして、見つけたのが、和弘さんの会社がある神戸ファッションマート3階のスペースだった。たまたま、賃貸オフィスを検索したら、ここがヒットしたという。きっと、縁があったのだろう。在庫を置く場所、オフィス、展示と商談のスペース以外に設けたのが大きな木のプールがあるプレイコーナー。大きな商業施設の一角ならともかく、単独の店舗でこんなスペースを持つ同業他社は恐らくないだろう。それだけに、Instagramや口コミでウワサがひろがっているらしい。
だから、取材当日は平日にも関わらず、10人を超える親子連れが木のプールで遊んでいたわけだ。

神戸ファッションマートって、
子どもが安心できる施設なんですよ。

 最寄り駅である「アイランドセンター駅」には、おむつ交換台のあるトイレがある。しかも駅から直結で雨の日も安心。だから、神戸ファッションマートはお子さま連れには安心できる施設であり、六甲アイランドは子どもを連れていきたくなるまちでもあると小百合さんは言う。
店舗に大きな木のプール(プレイコーナー)を設けた効果から、子どもを連れて遊びに来るひとが多くいる。Instagramのフォロワーは2000人を超えた。最近はどこのまちでも、子どもがカラダを動かせる場所が減っている。このスペースが親子連れのコミュニティースペースになることを小百合さん=KIITASUは願っている。ここからはじまって、六甲アイランドに子どもたちの遊び場が増えていくと良いなあ。そんな感想を持った取材だった。

平日だったが、想像をはるかに超える子どもたち(子ども連れ)の数だった。
平日ゆえに入園前の子どもたちばかりだったが、土日は幼稚園児が増えるらしい。訪れているひとに聞いてみたが、意外にも島外の方も多かった。お客さま同士がママ友になるケースもふえているらしい。SNSで子どもが遊べる場として拡散されているからか、神戸空港からフライトの待ち時間を利用して来てくれた親子があったとも。「じゃあ、ファッションマートのあの店で集合ね!」というママ友も多いとか。なんだか、明るい話題ですね。

インタビュー&ライティング 田中有史

 

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