VOL.29

2025.03.07 FRI.

songdream KOBE

神戸チャイハーネ

「日本茶復権」を掲げる日本茶専門カフェ。日本茶ソムリエでもある店主が、日本茶の楽しみ方をさまざまに提案する。外から受ける印象とは違い店内に一歩足を踏み入れると想像以上に奥が広くて快適。この居心地の良さに、「平日は9割が常連」と言われるのもうなずける。ここの空間で、いままでに味わったことのない日本茶の楽しみ方に出会っていただきたい。

神戸ファッションマート2F

songdream KOBE

前回の取材以来の訪店だ。おっ、店に入ってすぐ右側に、前にはなかったおにぎりなどのテイクアウト商品が並んでいる。店主の植木さんによると、お店をもっと利用してほしいのでテイクアウトを広めたいそうだ。そして今回の「うちのいちばん人気」とも関係するのだが、テイクアウトだけでなく食事にもチカラを注いでいきたいとのこと。そんな思いが通じて、この店ではランチがいちばん人気だという。

店長 植木祐平 さん

神戸は元町商店街にある老舗お茶屋さんに勤めていた植木さん。その店で、日本茶ってこんなに美味い!こんなに凄い!という感動を体験。道行くひとに日本茶を振る舞ったり、茶葉を売ったりしていたが、葉っぱを売るだけでは日本茶は普及しない。「スタバのようなお茶屋を出したい」と一念発起して、この店をオープンした。

ランチがうちのいちばん人気。
なかでも茶飯が皆さんのお気に入りです。

 このお店には昨年5月からはじめたメニューがある。“お茶屋の手作りお昼ごはん”と名付けられたランチだ。なんと、このメニューが、このお店のいちばん人気であり、稼ぎ頭だという。
そもそもは、テイクアウトのお客さまを増やしたかったが、半年間がんばったけど、思うような結果が出なかった。昨今はコンビニで買って、お昼を済ませるひとが多いのが原因だろうが、客足が離れていった。なんとか前のお客さまを呼び戻そうと考案されたのが、このランチだった。
ランチ営業は毎日。焼き鮭定食、ふわふわ卵の鶏そぼろ丼、お茶屋のお茶漬けなど、ぜんぶで5種類。日々、こころを込めて用意している。すべてのランチメニューで茶飯か十六穀米が選べるが、お茶屋さんだけに茶飯の人気が高いとか。お米は灘の老舗米問屋「いづよね」さんから仕入れている、極上のブレンド米。季節に応じて「いづよね」さんが腕によりをかけて、ブレンドの配合を変えるきめ細かさだ。
すべてのセットに豚汁、新茶の佃煮、わらび餅などがつく。何種類もの根菜類がたっぷり入った豚汁は、お客さまにすこぶる評判が良い。デザートのわらび餅は毎朝仕込むこだわりの逸品。ここへ、ほうれん草のお浸しや大根おろしなども添えられる。そして特筆すべきは、香の物とは別につく、お茶がらで仕込む“新茶の佃煮”だ。お茶の健康成分は、じつはお茶がらにたくさん残っていて、植物繊維やポリフェノールが約50%以上も残存しているとか。伊勢のあたりでは新茶の茶がらと縮緬(ちりめん)山椒で炊くが、この店ではイカナゴの釘煮と生姜を入れて炊いているそうだ。イカナゴの釘煮というあたりに神戸らしさがある。

この新茶の佃煮は持ち帰り用にカップ入りで販売されている。ちなみに、ワンカップ500円。ごはんのお供になるだけでなく、蕎麦や素麺の付け汁に混ぜると、いい具合の味変にもなる。オープン当初には、この新茶の佃煮はなかったが、試行錯誤を繰り返した末に、オープン2年後から登場した。いまでは、この店のランチに無くてはならない存在だ。試食させてもらったが、想像したような濃い味の佃煮ではなく、ほんのりお茶の味を感じ、イカナゴの釘煮や生姜と絶妙なバランスを醸す上品な味だった。この新茶の佃煮は出来上がりまで5時間かかる。ゆっくり丁寧につくらないと、ふっくらした仕上がりにはならないのだ。まさに、手作りならではの味わいだ。

テイクアウトのお客さまを、もっと増やしていきたい。

 はじめてはみたが、思うほどに伸びなかったテイクアウト用の商品。いまはまた、入口すぐのところでコーナー展開を再開して復活している。植木さんは、どうしてもおにぎりのテイクアウトはやりたいらしい。コンビニ商品との価格差は縮まりつつある。それに、名店「いづよね」さんのお米を使ったおにぎりだ。
ランチを食べる時間がなかったり、通りすがりに買っていくひとが、おにぎりが縁でお茶を飲みに来てくれるようになれば良いですね。おにぎりだけに、「縁を結ぶ」というわけだ。

今回試食させてもらったのは、新茶の佃煮ともう一品。「お茶のふりかけ」だ。製法はお聞きできなかったが、細かなお茶の葉とお塩を丁寧に煎り上げたような感じだった。少しお茶の苦みが残りつつ、口中にお茶の味をほんのりと感じる。ごはんにパラリと振りかけると食欲が増しそうだ。ランチメニュー5種類の中で唯一、茶飯がつかないものがある、それは、何でしょう?オープン以来のメニューというカレーだ。創業当初はトマトとチキンのカレーだったが、いまはキーマカレーに変わっているそうだ。炙りチーズがトッピングできる(テイクアウトには無し)。カレー好きとしては、そそられるなあ。そんな今回の取材でした。

インタビュー&ライティング 田中有史

 

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