VOL.06
2023.5.31 WED.

今回の「プロの目、プロの技」というテーマに対して事前にストアマネージャーの片山さんからご回答いただいていた内容は『お客さまからいただいた図面からその部屋に合った家具をすぐにお選びする』というものだった。それをお聞きして思ったのは、“それってインテリアコーディネーターなんだから、当たり前のことじゃないの??”ということだった。ところがだ、片山さんは話し出すと同時に3Dソフトを動かして驚くべき完成度の画像を見せてくれたのだ。で分かったことは“すぐに”という言葉に「プロの技」のヒントがあったのだ。
ストアマネージャー 片山優 さん
ストアマネージャーとして法人向けを中心に、販売・運営・管理など幅広い業務を担う。入社後、インテリアコーディネーターの資格を取得。自社開発の3Dソフトを自在に操り、お部屋の完成形の画像を見せながらわかりやすく家具選びをサポートしてくれる。落ち着いた物腰、オシャレな装いで好感度が高い。
お客さまからいただいた図面と内装の情報から、
お部屋に最適の家具を“すぐに”ご提案できます。
「song dream」というブランドはわたしたちの経営母体である富士家具が運営する中国発のブランドなんです。ヨーロッパのデザイナーを使い中国で製造しています。ご存じのように中国は非常にIT技術が進んだ国です。その恩恵で今日ご紹介する独自の3Dソフトを、われわれも享受することができているんです。
このソフトは家に家具を配置した様子をまるで完成形のように3次元のイメージ画像でお見せすることができます。ですから、お客さまから図面をいただきそこから住まいや内装の情報がつかめると、その部屋に必要な家具のサイズ、カラーを選び、お部屋に合わせてレイアウトまでしてすぐに(この“すぐに”がポイントだったんですね!)ご提案できます。まずは一般的な案をお見せしたうえで、家族構成やライフスタイル、ご家族のお好みなどの情報を加味したプランをつぎつぎとお見せすることができます。そうすると、アタマの中で想像するだけと違い、実際に見比べながら候補を絞っていくことができますから、とてもわかりやすいとご好評をいただいております。

ほら、わたしたち独自の3Dシミュレーションソフトで
こんなご提案ができます。

「ほら」と言われてタブレットの画面を覗くと、お部屋にソファーなどの家具が設置された画像です。ソファーの貼り地を変えたり色味を変えたりも簡単に見ることができます。ソファーの位置を変えたり、目線を変えて違う角度からの見え方も確認することができます(なるほどー。これは、わかりやすい!)。影までついて立体的に見えるんです。 図面から見立ててご要望をお聞きしたり、ご家族や暮らし方の情報を引き出しながら、このソフトで可視化していくわけです。住宅メーカーですと3Dソフトを導入されているところはかなりあります。でも家具ショップで、これほどクオリティーの高いシミュレーション画像を再現できるソフトを持っているところは少ないでしょうね。他社にはまだないので、私たちの大きな武器になっています。立体化したご提案を見ていただきながら、プロのアドバイスを受けられることで、わたしたち独自の魅力になっていると思います。
とはいえ、図面の数を見ることが、なによりも大切です。
住み手の家族構成や年齢構成、ライフスタイルによって、同じ部屋であっても必要な家具もその配置もずいぶん変わります。例えば夫婦ふたりだけで暮らすい住まいであれば、リビングでゆっくりとくつろぐ時間もたっぷりとありますから、ソファーを大きめにできるようにダイニングスペースとの動線を確保したレイアウトをご提案します。仮に同じ家だとしても小さなお子さまがいらっしゃるご家庭であれば、ダイニングスペースで子どもさんが勉強したり、遊んだりすることも多いでしょう。そうすると、ソファーでゆっくりとくつろぐような時間はあまりないでしょうから、ダイニングテーブルを大きめにして、リビングスペースを小さ目にするなど、違ったご提案をすることになります。当たり前ですが、これらの提案や判断は3Dソフトが自動的にやってくれるわけではありません。インテリアコーディネーター各自の発想によるところとなります。そこで大事なのが図面の数を見ることなんです。
数を見ることでモジュール(建築の基準寸法)やグリッド(構造の立体的な捉え方)などを理解できるようになります。図面が読み取れるようになるわけです。 すると住まいの情報をじぶんで理解できるようになりますから、暮らし方や趣味嗜好の情報をプラスしていけば、必要な家具のサイズやカラーを選んでいけるようになります。 あとは、この3Dソフトを利用していろんな角度から仮設しながらシミュレーションしていけば最適なご提案が見えてきます。その過程をお見せすればお客さまもいろいろと比較しながら見ることで理解しやすくなりますし、納得度も上がるというわけです。

家具選びの場合もありますし、インテリアのご相談の場合もありますが、年間で数百件以上のコンサルティングをしています。そのご相談を通じて数多くの図面と接していますし、お客さまの要望の多彩さにも対応しています。そんな中でお客さまの住まいや暮らし方の条件を理解し、3Dシミュレーションソフトを使って視覚化し、お客さまが安心して家具を選んでいただけるようにお手伝いをしています。
口頭だけの説明に比べると、
随分と安心感があって、非常に喜ばれています。
カタログをお見せしながら口頭だけでご説明していたころと比べると、コンセンサスをとりながら進められるというのは大きなメリットです。これで本当に大丈夫?というような不安は無くなったと思います。同意して買っていただいているので、「思っていたのと違った」というような齟齬もほぼありません。3Dソフトで家具を決めながら予算も組んでいけますから、家具選びにおけるお客さまとの関係という意味では理想に近づいていると感じています。というわけで、図面を数多く読むことから獲得した図面の読み取り力プラス3Dソフトという強力な武器がわたしたちの「プロの技」とお考えください。
※写真撮影時のみマスクを外しております。各店舗とも適切な感染症対策を実施しております。
店内を見渡してみると、たくさんの一枚板が並んでいる。なかには天井に届きそうな巨大なものもある。こんな大きな一枚板が取れるなんて、この板の原木はいったいどのくらいの太さのものなんだろう。なぜか神社のまわりの鬱蒼とした森の中にありそうな“御神木”をイメージしてしまうのでした(実際の一枚板はそんな場所から切り出したりはしないんですけどね)。一枚板という特殊な世界だから、きっと他の家具店さんにはない特殊な「プロの目、プロの技」があるんだろうなあと、期待に胸を膨らませながら店舗責任者の宮島さんが口を開くのを待っていたのであります。
店長 宮島寿史 さん
もとはインテリアにゆかりはなかったが、販売に興味がありアトリエ木馬に入社して7年目。店舗責任者として、販売はもとより商品の提案、アフタフォローも担当する。九州の本社工場まで原木を見に行った経験、一枚板の納品立ち会いで得た知識をフルに生かした提案でお客さまからの信頼は厚い。
適切なご提案ができるかどうかは、けっきょくちゃんと
お客さまからヒアリングできるかどうかなんです。
一枚板というものはある意味正体のわかりにくいものなので、それを欲しいと思ってくださるお客さまは、その不確実な魅力にひかれて来店されます。サイズ、色合い、ご予算を聞くだけでお客さまが求める一枚板をご提案できるなら、とってもラクなんですけど。一枚板って、蓋を開けてみないとわからないようなところにこそ魅力がある商品ですからね。好みの板がどんなものかがわかって原木までたどりついても製材してみないと、どんな色なのか風合いなのか味なのか、はたまた穴があるのかなど、わからないですからね。蓋を開けてみるまでわからないぶん、お客さまは待つ間のドキドキワクワクに魅了されます。だからこそ世界にひとつの、じぶんだけのオンリーワンと巡り合えるわけですからね。その出会いであったり、手にしたときの喜びがひと塩なんですよ、一枚板は。
まずはほとんどの家具と同じように、サイズやカラー、ご予算から一枚板選びもスタートします。でもなにぶん一点物ですので、そう簡単にはいきません。実際に商品をご覧になる中で、最終的には最初の条件には当てはまらない商品を選ばれることも多々あります。

一枚板選びって正解もないけど、間違いもない。
そういう世界なんです。
先ほど申し上げたように、一枚板というものは世界にひとつの一生ものの商品です。反面カタログではご提案できない商品でもあります。カタログ商品と違うところは実物を見て、触れてもらってナンボということ。そしてインテリアって正解も不正解もない世界ですから、これまでの納品経験をもとにご提案させていただきます。最後はお客さまが気に入っていただくことだけですから。さらに言うと、想像以上の出会いを体験していただくことも一枚板の醍醐味ですね。
一生ものですから、売って終わりの世界じゃありません。納品したあとも、お客さまのライフスタイルやライフサイクルの変化に合わせながら、一生寄り添っていくような商品が一枚板です。買うときは大家族であっても将来必ず家族構成は変わります。生活の指向も変わります。ですから、子どもが独立したからダイニングテーブルをデスクとセンターテーブルにしたいなどと将来は使い方も大きく変わっていく例がたくさんあります。そんなことができるのも一枚板の魅力です。
ご提案に際しては、お客さまが言われるままのものをご提案するだけではプロとは言えない。そんなプロフェッショナリズムとプライドを持っているつもりです。それが、本日のテーマである「プロの目」であり、「プロの技」ではないでしょうか。
一枚板が欲しいとおっしゃる、
その奥にあるエピソードをお聞きしたい。
これくらいのサイズ感のものが欲しいと、お客さまが来店されたとします。ホントウにそのサイズで良いんですか?と、ヒアリングの中で変更になることが意外と多いので一旦、立ち戻ってご提案することが大切なんです。暮らし方や家族構成をお聞きして家の中の動線をイメージします。どのような使い方をされたいのかも探っていきます。床がウォールナットだから天板もウォールナットでと言われた場合でも、色合いを分けたほうがお互いの個性が引き立ち合いますよと言ったりします。おっしゃるサイズ感よりもひとつ上のサイズをオススメする場合もあります。そのほうがお客様の暮らし方によっては、さまざまな生活シーンを生み出し人生をより豊かなものにしてくれることもあります。

それらのご提案ができるのも、これまでさまざまな納品に立ち会ってきた経験があるからなんです。お客さまからヒアリングしたことをじぶんなりに解釈したり経験を疑ってみたりしながら、より適切なご提案をするよう心がけています。適切なご提案は適切なヒアリングから。お客さまは一枚板が欲しいという一途な想いだけを携えていらっしゃいますが、その想いの奥にあるエピソードをお聞きしたいのです。そこでわかったライフスタイルやお好みから、理想の板の種類やサイズを導き出し、お客さまと一緒にたくさんの在庫の中から選んでいきます。
買って失敗したと言われることはありません。
一枚板を求めてやってくるお客さまには、家庭での時間を楽しみたい傾向が見えますね。インテリアへの関心が高くこだわりが強いお客さまばかりです。最初にイメージされたものとまったく違ったものを買ったお客さまも多くおられます。なかには、先に家具を買ってから、家を家具に合わせるような方までいらっしゃいます。一生ものですから、買うまでに半年以上かかるようなお客さまもいらっしゃいました。そんなお客さまたちに満足していただくのが、プロの楽しみでもあります。
いままでお話ししてきたことは、もちろん教科書的なセオリーをひと通り知識として押さえたうえでのことです。そこに経験の蓄積を生かしていきます。いちばんの経験値は納品に立ち会うことと、その場数です。それによってできるだけ多くの引き出しを持つことで、プロとしてお客さまの信頼を勝ち得ていくことにつながるのではないでしょうか。
洋服ですと街を歩けば流行がわかります。飲食ですと食べ歩きを重ねたり、気に入ったメニューのレシピを調べたりすることもできます。ある意味ニッチな商材ゆえに、お部屋に合うかどうか心配される方が多いです。そこを解決するのがプロです。ものをいうのは、あくまでも経験です。トレンドがない一枚板ですから、実際に住んで使うお客さまのことをちゃんと理解すること。それを第一にしています。

最後に申し上げたいのは、「探すよろこびも一枚板選びだ」ということです。ですから、固定観念で決め込んでしまって、自ら好みの板と出会う可能性を狭めているような方には、どんどんヒアリングをして可能性を広げてあげたいと思っています。それも「プロの目とプロの技」かもしれませんね。
宮島さん、本日はどうもありがとうございました。すごくオーソドックスな基本のようでありながら、プロの矜持をヒシヒシと感じさせるお話でした。「ある意味正体がわかりにくいもの」とおっしゃる一枚板と日々向き合うことでシンプルにヒアリングの大切さという接客や販売の真髄をお聞きできました。一枚板にひかれた方は、ぜひいちどお店を訪ねてみてください。宮島さんとお話をしているうちに、欲しくなっちゃうかもしれませんよ!
インタビュー&ライティング 田中有史
※写真撮影時のみマスクを外しております。各店舗とも適切な感染症対策を実施しております。
本日見せていただいた3Dソフトによる画像は驚愕するほどのリアリティのあるものでした。想像だけでは把握できない、家具を実際に設置した状況をリアルにイメージできます。それだけでも一見の価値あり。新築による新規購入、模様替えや買い替えをお考えなら、いちど図面を片手に相談に行かれたらどうでしょう。冷やかしでは困りますよと前置きしておきますが、3Dソフト体験だけが目的だったとしても、あれを見ちゃうとその気になってしまうかもしれませんよ!片山マネージャー、本日はありがとうございました。
インタビュー&ライティング 田中有史