VOL.20

2024.12.19 THU.

カーテンコールコレクション

カーテンコール
コレクション

オーダーカーテンやクッションなどのインテリアファブリックを中心に椅子の張り地、輸入壁紙、ラグ、カーペットなどを幅広く取り扱う。店内には常時300点以上のカーテン生地を在庫。この店オリジナルのカーテンサンプルを多数展示。窓装飾プランナーの資格を持ったスタッフが要望に応じた提案をしてくれる。

神戸ファッションマート1F

神戸ファッションマート店

今回の取材テーマは「いままでで最高難度のご注文」である。さて、このお店は主にオーダーメイドカーテンを受注販売しているお店。「いままでで最高難度のご注文」といえるようなカーテンとは、どんな代物か?はたして、素材が変わったものなのか。それとも、柄がアッというような奇抜なものなのか。なにせ、最高難度だからなあ。ワタシの想像を超えた(裏切る)ものなんだろうなー。

店長・窓装飾プランナー 阿辺麻友香さん

芸術大学で染色テキスタイルを専攻。卒業後、窓装飾プランナーの資格を取得し現在の会社のスタッフとしてカーテンやブラインドの提案・販売を担当して10年目になる。店頭での販売だけでなく実際にお客さまの自宅にお伺いして、現場を見たうえでお客さま目線での提案ができるように心がけている。

3つの窓をすべて違った組み合わせのカーテンにしたい。

わたしにとって、いままででいちばん難しかったのは、 「3つの窓のカーテンをすべて違う組み合わせ方でつくりたい」という、ご注文だったんですよ。と、言う阿辺店長。その言葉を聞いても、どんな風な注文だったのかが、ピンとこない。どういう意味??状態だ。つまり、それだけ高難度なのだ。こんなときは、あれこれと聞くよりも、絵に描いてやりとりする方が早い。こうですか?ああですか?と、iPadに下手くそな絵を描きながら聞き出して、やっと理解。フツー、カーテンというものは、一つの窓に対して左右同じ柄のものを吊るしますよね。ところが、このご注文主さんは、違った。別々の柄のカーテンを、一つの窓に吊るしてほしい。さらには、三連の窓ともに違う組み合わせで吊りたいとのことだったのだ。

なるほど、これは、難問。単に柄を変えたカーテンを6枚つくれば良いという単純なものではない。1つならお客さまの好みのものをペアにすれば、多少ミスマッチでもお客さまが満足すれば、それで良い。ところが6つのバランスを整え、部屋の眺めとしてもちゃんと成立するようにしなければならない。オーダーカーテンのお店なので、異なる生地同士を組み合わせてカーテンをつくることはこれまでもあった。しかし、連窓で3窓すべてを違う柄でという注文ははじめてだった。
そこで、阿辺店長はどうしたか。まず部屋をリサーチすると、壁紙や家具に統一感がないと感じた。だから、カーテンに目を集めるべく、カーテンの色はインパクトのあるものを選ぶべきだと思った。そんな観点で集めた色柄の生地サンプルを、ご注文主さんにできるだけ多くお見せし、気に入る生地を探してもらった。とはいえ、あまりに多くのサンプルを見せると迷われるので、そこは程よい数にしたとか。そして、生地が決まったら3窓それぞれの配色バリエーションとカーテンの割り方を図にして、シミュレーションしやすいようにして提案した。できるだけ、仕上がりをイメージしてもらうためだ。なるほど、なるほど。これは合理的だな。まず、方向を整理していく。絞る。そして想像しやすい提案をする。これは、他の仕事でも当てはまる視点だ。こちらも、見習いたい。

結果、「カーテンコールさんのおかげで、納得のいく素敵なものになった」と、喜んでいただいた。変わった注文で難しい仕事だったけど、とても楽しかったと思い出す顔は笑顔そのものだった。

個性を求めてくるお客さまは、
こちらも勉強になるから楽しいですね。

この注文を通して、改めてモノづくりやデザインの楽しさを実感したと阿辺店長はいう。自身の配色の引き出しも増え、その後の仕事に生きているという。仕上がったものを気にいってもらえるか、心配でドキドキしたけれど、最終的にとても喜んでもらえて嬉しい。カーテンの選び方や組合せには一定のルールがある。でも、今回、そのルールを一旦忘れて、固定概念を外して考えていった。じぶんも面白いものが好きだから、そういう考えに共感できた。オーダーカーテンなんだから、もっと自由にやれば良いということにも気付かされた。個性を求めてくるお客さまはいても、これまで実現できなかったこともある。それは、じぶんの中で勝手に“これは、こういうものだ”というルールができあがってしまっていたからなんだなあ。と、この注文から学んだという阿辺店長だった。

通常は半月ほどで採寸から制作までが終了するが、この仕事は2ヶ月もかかった。じっくりと納得ができる提案をしたら、ちゃんと冒険してくれるお客さまは、もっといるはずだ。これからもハードルが高い仕事に、“それは、ワタシがやります”と、立候補したい。おとなしめな印象の阿辺店長の、力強い言葉が印象的だった。

インタビュー&ライティング 田中有史

 

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